擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「はい、経理課長には誰にも言わないように、お願いしました。だからこの件を知っているのは、私と課長と雄大さんだけです」
「それなら、犯人は近いうちに動く。経理課長が気づきやすいように、今度は大きな金額を動かすはずだ。亜里沙、こっちにおいで」
彼に手を引かれて社長室に入ると、デスクの上にあるパソコンを見るよう促された。
「申請書をいつ改ざんしたか、これで調べよう」
「パソコンで分かるんですか?」
「YOTUBAのすべてのパソコンはシステム管理ソフトを入れてあるんだ。誰がいつどんな作業をしているのか、分かるようになっている。それのデータを見られるのは、重役たちと俺だけだよ」
「そんなの、知らなかったです」
「パソコンを支給する前に入れてるから、言わない限り気づかないかな。ほら、これ見て。データが出てきたよ」
パソコンモニターには個体ナンバーとログインとログアウトの時間がずらりと並んでいる。
「わ、深夜にパソコン動かしてる人、多いですね」
「これはIT部門の社員だよ。メンテや企画の締め切りで深夜作業することもあるから、そのせいだな……」
彼はマウスをカチカチと鳴らして日付を変更していき、データを確認し続けた。
「亜里沙、変な動きしている個体見つけたぞ」
「え? どれですか?」