擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「社長夫人の罠にかかって四つ葉グループに出入り禁止になったって、涙ながらに訴えるんだ」
「私が罠にかけたって言ったの?」
「そう。社長夫人は香坂社長を連城さんから奪っただけでなく、仕事までも奪ったって。これから先どうやって暮らしていけばいいのか。仕返ししたいけど術がないって、しくしく泣くんだ。同情するだろ。社長夫人はすげー酷い奴だって思ったわけ。ほんと、お前、最悪な奴だよな」
高橋の強い視線が亜里沙に突き刺さった。
反論しようとしたら、彼にジェスチャーでとどめられた。
全部自白させてから、反論した方がいいみたいだ。
「それで横領の罪を着せて会社から追い出して、連城さんを経理に雇ってもらおうと思った。彼女簿記の資格あるって言っていて、ここで働きたいって言っていたから、協力したんだ」
「高橋くん、きみは連城に騙されているよ。彼女は同情を向けるべき人ではない」
「騙されてるって……どういうことですか」
高橋は怪訝そうな顔で彼を見る。彼が話しにくそうにしているので、代わりに亜里沙が連城の正体を教えることにした。
「連城さんは彼のストーカーなんです。何度拒絶しても、しつこく付きまとっていて……本来ならお仕事をしなくても生活できるような家柄なのに、ここの掃除婦になったのは、彼に近づきたいがためなんです」
「うそだろ?」
「ほんとうなんだ。亜里沙、例の証拠写真を彼に見せて」