擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
亜里沙はスマホの中にある、鬼の形相をした連城の写真を高橋に見せた。
「……これは?」
「連城さんが社長室に忍び込んでいたときの写真です」
高橋は信じられないような面持ちで写真を眺めていたが、すぐにがっくりとうなだれた。
「俺は、なんてことしたんだ……ごめん」
それっきり黙ってしまった高橋を見つめながら、亜里沙は少し後悔していた。事件のすぐあとに、連城の正体を教えていればよかったと。
「今回は少額な事や騙されていたことも鑑みて、刑事事件として処理はしない。その代わり一週間の謹慎処分を申し渡す。しっかり反省してまた業務に励んでほしい。俺はきみの能力を買っている」
「ありがとうございます」
高橋はうなだれたまま帰宅していった。
「さ、俺たちも帰ろう。眠い」
ひと仕事を終えたときのように軽く伸びをする彼の姿を見ると、なんだか今起こっていたことが大した事件でないような気分になる。
冷徹なとこもあるけど、基本的に寛大なのだ。
「はい、雄大さん」
点けっぱなしだったパソコンの電源を落とし、亜里沙は彼と一緒に帰路に就いた。
その一週間後、高橋は坊主頭になって出勤しみんなを驚かせた。
好奇心丸出しで「どうして坊主に?」と尋ねてくる人に「気分転換」と返し、相変わらずの冷静さを見せている。
そんな様子を見てホッとしながら経理業務をしていると、高橋が傍に来た。
「ちょっと話がある」