擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「はい!」
亜里沙は安堵の笑顔を返した。
これから連城にも新しい恋が見つかるといいな、と切に願う。
亜里沙が彼に出会えたように、連城にもきっとどこかに運命の相手がいるだろうから。
そして高橋にも、素敵な女性との出会いがあればいいと思う。
「ありがとうございます。雄大さんもすごく喜びます」
「おう」
戸惑いながらも笑顔を見せてくれる高橋は、ちょっとばかりの女性不審に陥ったとも言った。
高橋の新しい恋は当分先のようである。
その夜、亜里沙は彼に報告して祝杯を交わし、擬似結婚を解消することを話した。
近日中に結婚指輪を買う予定だけれど、亜里沙の気持ちはきちんと伝えていないから。
仕事では時に冷徹と言われることもあるけれど、プライベートでは甘い顔を見せてくれる。
食も感覚も好みが合って、亜里沙が困っているとすぐに気づいて助けてくれる。とても頼りになる人。
それにきっと、こんなに亜里沙のことを愛してくれる人は二度と現れない。
最初は身分差がありすぎてとても戸惑ったけれど、彼はそれをあまり感じさせない。それは亜里沙と感覚が合うから。
だから今ならはっきり言える。
「私を雄大さんの本当の妻にしてください」
はにかみながら言うと、彼はこの上ない極上の笑顔をくれた。
こんなにうれしそうな表情は、きっと亜里沙しか見たことがない。
「ありがとう。その言葉、ずっと待ってたんだ。俺は亜里沙の本当の夫になるんだな……」
少し潤んだ彼の瞳は歓喜と愛情に満ちていて、それがとても愛しくて、亜里沙は彼を抱きしめた。
自分から抱きしめたくなる男性は、後にも先にも彼一人だけだ。
「私、気品を持てるように努力するね。公の場に出たとき恥をかかないように」
「大丈夫。努力なんかしなくても、亜里沙はそのままで十分に気品があるよ。だからあまり変わらないでいてくれ」
──雄大さんは、ほんとに素のままの私が好きなんだ……。
「うん」
彼の言葉がうれしくて、亜里沙は感慨に浸る。
その後強く抱きしめ返され、亜里沙の夢は彼の色に染まった。