擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

 ──彼の部屋でお話をするというのは……やっぱり、そういう意味なんだよね?

 長期にわたっておひとりさまだけれど、そういう行為はかなり前に経験済みだ。

 だから問題ないのだけれど、うるさいほどに胸が高鳴っている。

「どうぞ、入って」

 エレベーターを降りて少し歩いた先にあるドアを開けて、亜里沙を先に通すようにいっぱいに広げて待っている。

 亜里沙はそっと中を覗いた後にゆっくり足を踏み入れた。

「わあ……スイートルーム、なんですね」

 ネットなどの写真で見たことはあるけれど、実際に見るのも入るのも初めてだ。

 豪華な家具と、ひとりで宿泊するには広すぎる間取りに唖然としてしまう。

 感嘆の面持ちで見回していると、背後からすっぽりと抱きすくめられた。

 うなじに柔らかな圧を感じて唇を落とされたことを知る。

 途端に胸のドキドキが復活した。

「俺とこうなること、絶対後悔させないから」

「それは……どういう意味?」

「そのままの意味だよ。だからなにも考えずに、俺に身を委ねて」

 体の向きを変えられると、彼の艶のある瞳に見つめられた。

「今夜はきみを宿に帰すつもりはないから」

 顎に手を添えられて重ねられる唇から、彼の熱がとめどなく伝わってくる。

「待って。あの、今日は汗をかいたから……」

「待てない。俺が後で入れてあげるから。もう観念して」

 膝裏を掬われて、声を上げる間もなくベッドに運ばれた。

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