擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
肌にかかる彼の吐息も、全身を這う舌も指先も、飢えた獣のような光を宿す瞳も、すべてが亜里沙をほしいと訴えてくる。
知らずにこぼれ出る甘やかな声が彼の熱を高ぶらせ、色づく肌に繰り返される口づけが亜里沙を悦びに導いていく。
「亜里沙、かわいい」
夢の中に漂うようにふわふわした感覚の中で、彼の言葉が耳に届く。
彼がほしいと懇願するように腕を伸ばすと、端正な顔が少し苦し気に歪んだ。
「ごめん……ちょっと乱暴になる」
え? と訊き返す間もなく滾る情熱を身に受け入れると、亜里沙の意識は彼一色に染まった。
何度も高みに導かれてぐったりと横たわる亜里沙の肌を、彼が愛し気になでる。
その心地よさにまどろみ、いつしか眠りに落ちていた。
◇◇◇
「──ん? 亜里沙?」
明るい空気を感じて目が覚めた雄大は腕の中にいる筈の亜里沙の姿を探した。温もりがまだわずかに残った痕は、ベッドから出て数十分ほどだと感じられる。
時刻はもう昼に近く、いつも六時には目覚める雄大にとってかなりの寝坊だ。
どこにいったのか、バスルームなどを探してもどこにもいない。
「まさか、宿に戻ったのか」