擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
恵梨香の目がきらりと光っているように感じて、亜里沙は不思議な気持ちになった。
それというのも、今まで亜里沙が休暇を取ってリゾート地に行こうがなにをしようが、恵梨香はこれほどに興味を持って尋ねてくることがなかったからだ。
だから話す前に逆に訊いてみた。
「いつもそんなに訊かないのに……どうして、今回はそんなに興味を持ってるの?」
丁度運ばれて来たビールとお通しには目もくれず、恵梨香はにぃっと笑いかけてくる。
「だって、行く前と雰囲気が全然違うから。なにかあったのかな~っと思ったわけ。たとえば、そうだなぁ、おひとりさまじゃなくなった、とか?」
「えっ」
亜里沙は思わず声を上げていた。
──鋭い!
というか、恵梨香に言われたことに対して少なからずショックを受けた。
見た目で分かるほどに亜里沙は変化しているのだろうか。仕事の合間やふとした隙間時間に彼とのことを思い出すことはあっても、ときめく感情を表面に出しているつもりはないのに。
「ううん、結果的には、あいかわらずおひとりさまだよ。いい夢は見たけれど」
「ってことは、やっぱ出会いがあったんだ?」
恵梨香は勘が当たったことに満足したように言って、キラキラした瞳で亜里沙を見つめてくる。
話を聞きたくてうずうずしているようなその態度に戸惑いながらも笑みを零した。