擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー

 でも、亜里沙もこの二ヶ月間は、彼のことを思い出していた。

 ゴージャスで夢のようなときを過ごさせてくれたのは、一生に一度のことだと自分に言い聞かせていた。そうしていれば、自然に時が彼のことを忘れさせてくれると考えて。

 でも本心では……もう一度会いたいと思っていた。

 彼がYOTUBAの社長であるとか、いきなりすぎて困るとか、余分なことを取り払えば、彼に対する素直な気持ちがむき出しになる。

 ──私も、このまま一緒にいたい。

 無言で身を委ねると、導かれてマンションのエントランスに入ると、

「高坂さま。おかえりまさいませ」

 コンシェルジュが出迎えてくれた。

 午後十時を過ぎた今でもスーツをびしっと着こなし、気品のある紳士然とした彼の髪には、少し白い物が混じっている。

「彼女は私の妻になる、亜里沙さん。今日から一緒に暮らすことになるので、よろしく頼むよ」

 これも彼の策略なのか、どんどん外堀が埋められていく。

 急な展開についていけなくて、亜里沙は口をぱくぱくさせるばかりだ。

「かしこまりました。亜里沙さまですね。私はコンシェルジュの真田と申します。お困りのことがございましたら、なんなりとご相談ください」

 真田は丁寧なあいさつとともに柔和な笑みを浮かべる。人柄の良さそうなコンシェルジュに、亜里沙も笑顔と挨拶を返した。
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