擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
いっぱいに開けて支えてくれているドアから入った部屋は、チリひとつないような綺麗さだった。
広い居間とダイニングは三十畳で、二十四畳ある主寝室と十六畳の彼の書斎、あとは十二畳の部屋が三つあるという。
彼は三つある十二畳部屋のひとつ、書斎の隣にあるドアを開いた。
「ここを亜里沙のプライベートルームにするといいよ」
部屋の照明をつけると、小さなテレビと白いソファセットが置かれていた。パソコンデスクもある。
プライベートルーム!
「え、この部屋を、私が使ってもいいんですか? ひとりで?」
思わず声のトーンがあがった。
「他に欲しい家具があれば言ってくれ。手配するから。少し狭いけど、ごめんな」
「とんでもない! 全然狭くないです! 私のアパートの部屋よりも、実家で過ごしていた部屋よりも、どこよりもずっと広いです」
うれしさのあまりに勢いがこもり、彼に迫る形になってしまった。
彼は一瞬戸惑った表情をしたけれど、すぐにプッと噴き出した。
「喜んでくれてうれしいよ。夫婦とはいえ、お互いのプライバシーは尊重するべきだと思うんだ。俺としては本を読むときは集中したいし、家で仕事をすることもある。亜里沙もひとりになりたいときがあるはずだから」
「はい、あります」