擬似結婚ー極上御曹司の一途な求愛ー
「それは、ある。豆も種類豊富に取り揃えてるから、日替わりで楽しめるよ」
「そうなんだ……珈琲好きなんですね」
「実はマイスターの資格を持ってるんだ。だから、これから毎日亜里沙に美味しい珈琲を飲ませてあげられるよ」
珈琲マイスターとは、珈琲豆や産地などの豊富な知識と抽出技術を習得し、試験に合格した人のことらしい。
カフェで珈琲を提供できる資格……彼も手に職を持っているなんて意外だ。
亜里沙も珈琲は好きだから、美味しいものが飲めるのは素直にうれしい。
「でも、普段の朝食はどうしてるの? まさか珈琲だけ、とか」
「仕事のある日は近くにあるカフェで済ませているし。休日は遅く起きるから珈琲だけ飲んで、後は外食することが多いよ」
基本的に料理を作らないから、食材も買ってないわけだ。
「でもこれからは私が作るから、お買い物に行かないといけないわ」
「そうだな。一緒に買い物に出かけようか。亜里沙のアパートにも寄って、身の回りのものを取りに行ったほうがいいだろう。でもその前に、珈琲を飲もうか。とびきり美味しいのを、俺が入れるから」
亜里沙も起きて、と言われて渡された紙袋の中身を見ると、多くの女子が好きなファッションブランドのひとつに上げる『LISA』の服が入っていた。