こんなにも愛しているのに〜それから
「初めて言いましたもの。」
加藤はそれがどうしたと言わんばかりに
ビールを勢いよく呷った。
「加藤が退職するって、
いくら俺が辞めていく
人間だからって、
上司の俺に一言の相談もなくか。」
幾分前のめりになりながら
彼女に問いただした。
「これから退職届を出すんです。
私は円満退職したいですからね。
ちゃんと引き際を見極めてから
実行しますよ。
お二人のように、崖からダイブするようには
辞めません。
まぁ
会社からしたら、会社の頭脳である二人に
辞められるのと、
ただ単に年数だけ食っちゃって、
そのうち煙たがられる女子が
辞めるのとでは大きな差があると
思うんですが、
私も自分がしてきた仕事に誇りを
持っていますし、辞めどきを間違えて、
自分の経歴をだめにしたくないんです。
内実はともあれ、
一応弊社は上場企業で
名の知れた会社ですからね。」
加藤はしっかりとした
できた人間だとは
わかっていたが、
俺たちより
今までの自分
これからの自分をきちんと見据えて
将来を考えているのだと
感心した。
それに比べて俺は
俺がいなくてはここは回っていかない
とか
俺が辞めたらどうなる
なんて随分と独りよがりなことを考えて
その実
自分も周りも
何も見ていなかった。
茉里にも呆れられるはずだ。
少し
気持ちが凹んだ。
「私は、お二人とは立場が違いますからね。
この部署の立ち上げから、
今まで楽しいことばかりじゃなかったけど
仕事は楽しかったです。
でも
ここいらで本当の自分がなりたいものに
なろうかなって。
おかげさまで親も充分に元気なので、
当面介護の心配もなさそうですから。」
それから
各々の将来の話になった。
ヘタレな俺はどこまで行ってもヘタレで
三谷には首の皮一枚で茉里と
繋がっていることを
ざっくりと話してはいたが
加藤にはしばらく遠距離で淋しいとしか
言えなかった。
ましろに見つかったあの事も
結局は誰にも言っていない、
というか言えなかった。
加藤はそれがどうしたと言わんばかりに
ビールを勢いよく呷った。
「加藤が退職するって、
いくら俺が辞めていく
人間だからって、
上司の俺に一言の相談もなくか。」
幾分前のめりになりながら
彼女に問いただした。
「これから退職届を出すんです。
私は円満退職したいですからね。
ちゃんと引き際を見極めてから
実行しますよ。
お二人のように、崖からダイブするようには
辞めません。
まぁ
会社からしたら、会社の頭脳である二人に
辞められるのと、
ただ単に年数だけ食っちゃって、
そのうち煙たがられる女子が
辞めるのとでは大きな差があると
思うんですが、
私も自分がしてきた仕事に誇りを
持っていますし、辞めどきを間違えて、
自分の経歴をだめにしたくないんです。
内実はともあれ、
一応弊社は上場企業で
名の知れた会社ですからね。」
加藤はしっかりとした
できた人間だとは
わかっていたが、
俺たちより
今までの自分
これからの自分をきちんと見据えて
将来を考えているのだと
感心した。
それに比べて俺は
俺がいなくてはここは回っていかない
とか
俺が辞めたらどうなる
なんて随分と独りよがりなことを考えて
その実
自分も周りも
何も見ていなかった。
茉里にも呆れられるはずだ。
少し
気持ちが凹んだ。
「私は、お二人とは立場が違いますからね。
この部署の立ち上げから、
今まで楽しいことばかりじゃなかったけど
仕事は楽しかったです。
でも
ここいらで本当の自分がなりたいものに
なろうかなって。
おかげさまで親も充分に元気なので、
当面介護の心配もなさそうですから。」
それから
各々の将来の話になった。
ヘタレな俺はどこまで行ってもヘタレで
三谷には首の皮一枚で茉里と
繋がっていることを
ざっくりと話してはいたが
加藤にはしばらく遠距離で淋しいとしか
言えなかった。
ましろに見つかったあの事も
結局は誰にも言っていない、
というか言えなかった。