笑顔の向こうの君に
次の休み時間が始まると、
すぐ、隣の席から声がかかった。


「ごめんね。
先生が、無理やり押し付けちゃって。

僕ら、何とかなると思うから、
校内の案内なんて大丈夫だよ。

だから、気にしないで帰っていいよ。」

真也君はそう優しく言ってくれた。


実は、今日の放課後
新しい本買いに
本屋さんに寄るつもりだったんだ。


「え?いいの!?
じゃ、帰ります!」って


もう少しで口から出るところだった。

けど考えたら、
これでもし、
二人が移動教室で迷子になったら
私の責任だし。

うーん。

やむ終えん。


「ううん。
先生に頼まれたことだし、
別に放課後、予定ないから大丈夫だよ。

気にしないで。

じゃんじゃん案内してあげる。」


真也君は、クスッと笑って言った。

「そっか。なら、お言葉に甘えて

よろしくお願いします。」


いきなり、改まった口調になって
頭を下げてくれた。

律儀だなぁ。


「いいよ。全然。
これで、私たち仲良くなれたらいいね。」


あ!

ここまで喋ってから、
私は大変なことに気づいた。


「ごめん。私、宮本ちひろです。

一方的に知ってたから
つい自己紹介してなかった...。」

慌ててそう言うと、


真也君は一瞬驚いた顔をして、
クスッと笑う。


「大丈夫だよ。

知ってる...(ずっと前から...ね)。」


この時、私は、最後の方の言葉が
上手く聞き取れなかった。

何て言ったんだろう。

でも、聞き返すのは失礼かな?

と思って無かったことにした。



こうやって、話してると真也君は、
とてもいい人だと思った。

最初、びびっていたのが、申し訳ないくらい。
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