離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
プロローグ
人の記憶は、どうもあてにならないらしい。
薄っすらと目を開けた神谷百々花は、自分がどこにいるのかわからなかった。
ここ、どこ……?
カーテンが開け放たれた大きな窓から差し込む光がやけに眩しいのは、真っ白な壁のせいなのか。
いったん目を閉じ、光に慣れるためにゆっくりと開きなおす。たったそれだけの動作なのに、こめかみに鈍い痛みが走った。
その原因を思い出しハッとする。紛れもなく二日酔いだ。
高校時代からの友人、三宅愛華とホテルのラウンジで飲んでいた記憶の断片が薄っすらと蘇る。
そこまで深酒をしたのは二十七歳にして初めて。でも、それほどまでに飲んだ理由を思い出せない。
アルコール特有の気だるい身体をなんとか起こし、改めて自分のいる場所を見渡す。
二十畳近くあるだろうか。百々花が寝ていたのは、その真ん中に置かれた大きなベッドの上だった。
自分のアパートじゃないのはたしか。愛華の部屋でもない。
……もしかして、ホテル?
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