離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「私よ、私。美咲のふたつ上の真奈加。覚えてないかなぁ」
美咲の名前まで飛び出した。
横に立つ千景をパッと見上げると、その顔がじわりじわりと笑みに満ちていく。
「あのときの真奈加さんでしたか」
「よかった。二十年くらい前に会ったきりよね。でも千景くん、あの頃の面影がものすごく残っているから」
二十年前となると、千景は十三歳のころになる。
そんな昔にふたりが会っていたなんて……。
百々花はなんともいえない気持ちに包まれる。
真奈加によると、美咲とは同じ中学の先輩後輩だという。同じ部活動を通じて知り合い、先輩の真奈加を慕ってやまない美咲は、しょっちゅう彼女の家に遊びにいっていたそうだ。
十六歳という若さで出産した真奈加が周りから好奇の目で見られたり、悪い噂を立てられたりしたときに、一番近くで寄り添って守ってくれたのだと。
美咲の従弟の千景と会ったのも、ちょうどそのころだったらしい。出産と育児で忙しくなり、美咲とはそれきりになってしまったそうだ。
「こんなところで会うなんて思いもしなかったわ」