離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「百々花、いいところにきた。甘い玉子焼きとチーズオムレツ、どっちがいい?」
「どっちも好きだから、お父さんの食べたいほうにしたら?」
「そんなつれないことを言うなよ。それが決められないから百々花に聞いてるんじゃないか。なぁ、真奈加」
利一がデレッと目じりを下げる。百々花に向ける目とは、種類の異なるものだ。
もともと背がすらっと高く、白髪がなく皺も少ない利一は五十四歳には見えない。キリリとした眉と目は、若かりし頃のイケメンぶりを連想させる。
事実、真奈加によれば、社内でも女性ファンが多いのだとか。
なんにせよ、長年独り身で生きてきた父親が幸せそうなのは、百々花にとってもうれしいことである。
ただひとつの難点をあげるとすれば……。
「百々花さんもこう言ってるし、利一さんの好きなほうにしましょ。どっちがいい?」
「うーん。参ったなぁ。真奈加の作るのは、どっちもおいしいからなぁ」
「それなら両方作っちゃおうかしら」
「おっ、それいいね! 真奈加の手料理が朝からたくさん食べられるなんて、俺は幸せだなぁ」
ふたりのラブラブっぷりにあてられ通しなことくらいだ。