離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
いよいよ、明日には正真正銘の夫婦になる。
そう考えると、なんとなく落ち着かない。今夜が、神谷百々花でいる最後の夜。そう思うと特別感がいっぱいだ。
テールランプが見えなくなるまで考えごとをしながら見送った後、百々花は二階の昌也の部屋へ向かった。
階段を上がるときにリビングから、真奈加と利一の会話が漏れ聞こえてくる。
「千景くん、千景くんって、ずいぶんと親し気だったじゃないか」
「やだ、ヤキモチやいてるの? もうっしょうのない人ね。友達の従弟ってだけよ」
いじけるように言う利一と、まるで子供に言い聞かせるような優しい口調の真奈加。ふたりの姿こそ見えないものの、またラブラブモード全開が簡単に想像できる会話だった。
なるほど。利一の機嫌が斜めだったのは、真奈加が千景と昔からの知り合いだとわかったせいだったのか。
なーんだ。ほかの誰にも侵せない、父と娘の深い愛情劇かと思っちゃった。
思わず顔が綻ぶ。夫婦の仲が円満なのはなによりだ。これで心置きなく、この家を出られる。
軽い足取りで階段を上がり昌也の部屋をノックすると、不機嫌な「なに」という返事がした。
「入るね?」