離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
これで家を出るのを反対されるなんて、ある種の拷問ではないか。
百々花は小さくため息をつき、「昌也くんを起こしてくるね」と二階に向かった。
昨年、突然できた弟の昌也は大学三年生の二十一歳。
これまで兄弟に縁のなかった百々花には母親の存在同様に新鮮でついかまいたくなるのだけれど、昌也には鬱陶しがられているようだ。
口数があまり多くないせいもあるかもしれないが、百々花が話しかけても反応が薄い。
百々花の隣の部屋のドアをノックし、中の反応を待つ。ところが、なんの返事もない。
まだ眠ってるのかな……。
昨夜も遅くまで起きている様子だったから、夢の中なのかもしれない。
「昌也くん、入るよー?」
一応断りを入れてからドアを開ける。部屋は薄暗い。
遠慮なくずんずん足を踏み入れ、カーテンをひと思いに開け放った。眩しい光が一気に差し込む。
その甲斐あって、昌也はベッドでもぞもぞと動きだした。