離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「それなら遠慮なくいただくよ。よし、じゃ食べよう」
千景が百々花の肩に触れる。それだけで身体がビクッと弾むから困りものだ。
テーブルにつき、千景がいただきますと手を合わせる。
昨夜のフレンチレストランでもそうだったが、千景は食べているときでも美しい。背筋が伸び、フォークやナイフを扱う所作が華麗なのだ。
「おいしいよ」
百々花がじっと見入っていると、不意に褒められた。パッと目線を上げたところで千景と目が合い、そそくさと逸らす。不自然極まりない。
「……ありがとうございます」
たぶん千景は、百々花が挙動不審になっているのに気づいているのだろう。さっきからクスッと小さな笑みが漏れ聞こえてきている。
もしかして、キスをした反応を楽しんでいるの?
あまりにも自分ひとりばかり動揺しているから、そう思いたくもなる。ある意味、責任転嫁だ。
でも、千景は百々花の希望に沿って、自然な夫婦を演じようとしているのだから、自分もそうしようと改めて誓った。