離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
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シュプリームウエディングに来るのは、これで三回目になる。店のユニフォームから一張羅のスーツに着替え、約束の午後三時、受付にやって来た。
流川と名乗るべきか迷ったものの、名刺は旧姓のまま。千景の結婚が公になっていない可能性もある。
「アリアシェリーの神谷と申します」と名乗ると、受付の女性は〝またアポなし?〟といった表情を浮かべながらも丁寧に頭を下げた。
「流川社長と午後三時にお約束をしております」
今日はきちんと約束があるから堂々としていられる。
女性は「かしこまりました」と手もとの受話器を持ち上げた。しばらくして山下美園と名乗る女性秘書が現れ、百々花を連れ立ってエレベーターへ乗り込む。
その様子から、千景の結婚についてはなにも聞かされていないように思えた。
ワンレンボブできりっとした美人の美園は、いかにも秘書といった風情。スーツには皺のひとつもなく、立っている姿だけで様になる。
ふたつ上の階でエレベーターを降り、美園の後についていく。オフィス内はフロア全体が白を基調に清潔感があり、パーテーションの淵などところどころに差し色的にベビーピンクが使われやわらかな印象がある。ブライダル関係の会社らしい色使いだ。