離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活


突き当りまでくると、美園が足を止める。ドアには〝社長室〟とプレートが掲げられていた。
いよいよ社長である千景がこの中に。そう思うと、足もとから緊張がせり上がった。

ノックをして開けたドアから美園が先に入る。


「社長、アリアシェリーの神谷さまをお連れしました」


中にいるであろう千景の姿を確認する前から、百々花は頭を下げた状態で入室した。


「アリアシェリーの神谷です」


〝いつもお世話になっております〟がいいのか、それとも〝はじめまして〟がいいのか迷い、結局社名と名前だけにした。


「中へどうぞ」


千景に声をかけられ、そこでようやく顔を上げる。朝、スーツ姿の彼に会ったはずなのに、千景を見て胸の奥がキュッと詰まる感じがした。会社で見ると、いっそう素敵に見える。

ネイビーにドット柄のネクタイは、朝結んだまま乱れ知らず。上質な仕立てのダークグレーのジャケットは海外の有名なブランドだと、今朝ソファに置かれていたときに見えたタグで確認済みだ。
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