離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活


袖口からちらりと覗く腕時計も高級なもので、全身からおしゃれなのがにじみ出ている。

うしろでドアが閉まり、千景とふたりになった。

社長室は外のフロアとは違い、黒で統一されたシックな空間となっている。黒い革張りの立派なソファセットがあり、左側にはエグゼクティブデスクがある。メタリックとブラックの構成が、シャープな印象の千景に似合っている。


「そんなに固くなるな」


かちんこちんになっているのは、ばれていたようだ。


「……はい」


リラックスだとわかっていても、これから大事な打ち合わせだと思うとどうしても緊張する。

なんとか力を抜こうと深呼吸をしていると、ゆっくりと近づいてきた千景が不意に百々花を抱きしめた。
一気に息を吸い込み、そのまま呼吸を止める。


「リラックス、リラックス」


千景が背中を優しくトントンとするけれど、そうはいかない。リラックスどころか、逆に心臓が早鐘を打っていく。
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