離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活


「ただ、今回のフェアでは、さらに一歩突き抜けたものがほしい」
「さらに一歩、突き抜けたもの……?」


千景の言葉をそのまま繰り返す。漠然としていて掴みどころがない。
でも、それを千景に聞くのはナンセンス。自分で見つけなければならないし、百々花にも意地がある。


「承知いたしました。必ずいいものを仕上げます」


自分を奮い立たせ、言い聞かせる。


「楽しみにしています」


最後に僅かに笑みを浮かべ、千景は百々花に手を差し出した。それが握手だと気づくまで数秒。慌てて手を出すと思いのほか強く握られ、そして離れる間際になにかの合図かのように、千景の指先が手のひらをくすぐった。

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