離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

◇◇◇◇◇

「神谷さん、今日はわざわざ足をお運びくださってありがとうございました」


ミーティングルームを出ようとしたところで田原が声をかけてきた。
短い毛を整髪料で立たせ、切れ長の目が凛々しい顔立ちだ。両耳についているたくさんのピアスが印象的である。


「こちらこそ、素晴らしいフェアに参画させていただけて光栄です。田原さんの説明、とてもわかりやすかったです」
「いやぁ、そうですか? うれしいな」


田原はノートパソコンを小脇に抱え、照れ臭そうに頭を掻いた。


「このフェアが無事に終わったら、一緒に飲みに行きませんか?」
「……はい?」
「あ、いや、みんなと打ち上げをやろうかって話になっているので」


慌てたように田原が言いなおす。

屈託のない笑みで誘われたが、会ったその日のため戸惑った。かといって、せっかく仲間扱いしてくれているのに遠慮するのもどうかと、答えを探して目があちらこちらに泳ぐ。
そこに助け舟を出したのは千景だ。
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