離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

「難題を突きつけて悪かった」


唐突に謝られてまごつく。


「いえっ、仕事ですから当然です。千景さんに納得してもらえるものを造りますので」
「楽しみにしてる」


千景は百々花の髪をさらりと撫でた。


「みなさんには、結婚のことはお話しされていないんですよね?」
「まだ話してない。黙ったままにもできないが、もう少しこのままでいようと考えてる」
「そうしていただけると私も助かります」


千景の妻では、みんなも仕事をしづらいだろう。言いたいことがあっても尻込みしてしまうだろうから。仕事である以上、正直な意見をもらいたい。


「わかった。少なくともウエディングフェアが終わるまではそうしよう」
「よろしくお願いします」


千景は微笑みながらドアを開け、そこで再び真顔に戻した。

百々花をビルのエントランスまで送ろうとした千景を断り、ひとりで下行きのエレベーターに乗り込む。〝気をつけて〟と口パクで言った千景に黙ってうなずいた、
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