離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

フェアは三週間後。時間がない。


「それじゃ、今日はもうあがっていいよ。家でじっくりいいものを練ったほうがいい」
「いいんですか?」
「もちろん。だってアリアシェリーの未来が」


そこまで言って皆川が口をつぐむ。それ以上はまずいと思ったか、両手で口を押さえた。

その言葉に甘えて裏口から店を出ると、入り口で中を覗き込んでいる女性がいるのに気づく。
どうしたのかと声をかけようとして、百々花は足をぴたりと止めた。

もしかして、昨夜の……?

千景と暮らすマンションに乗り込んできた女性とうりふたつだったのだ。

知らないふりをして帰ろうかとも思ったが、それでは問題を先延ばしにするだけ。百々花も当事者のひとりだ。
それでも昨夜の凄みは記憶に新しいため、おそるおそる声をかける。


「あの……お店になにか……」
「すみません。神谷百々花って方はこちらですか?」


やはりそうだった。百々花に直接会いにきたのだ。
< 158 / 301 >

この作品をシェア

pagetop