離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
土壇場で迷ったが、しらをきるわけにもいかない。
「神谷は私です」
百々花が静かに言うと、彼女はにわかに顔を強張らせて眉を吊り上げた。
「あなたが……」
噛みしめるように言って、百々花を頭からつま先までざっと見る。嫌悪感に満ち満ちていた。
「ちょっと話がしたいの」
「それでは……あそこでお聞きします」
昨夜のように店先で声を荒げられては困ると、百々花ははす向かいのカフェを指差した。百々花がたまにランチをとる店でもある。
案内された窓際の奥の席に向かい合って座る。インターフォンのモニターを通して見たときは美人だとしか識別できなかったが、美しくカールした髪や色白な肌、ぱっちりとした目はフランス人形のようだ。歳は百々花と同じくらいだろう。
水が運ばれてくると、彼女はそれを一気に飲み干した。