離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

「いらっしゃいませ」


ところが、百々花はそのあとの言葉を用意していない。
というのも、シュプリームウエディングの誰かとアポイントを取っているわけでも、ましてや誰かを知っているわけでもないのだ。


「あの……?」


受付の女性が困ったように首を傾げる。


「あ、……しゃ、社長の流川さんはいらっしゃいますか?」


慌てて口を開いた。
社長の流川千景という名前と顔だけは、百々花も知っている。いつだったか、カリスマ社長特集という情報番組で見たことがあった。

シュプリームウエディングはここ数年、ブライダル業界で飛躍的に業績を伸ばしている会社である。社長である流川の堂々としたインタビューの受け答えは自信に満ち溢れ、三十三歳とは思えないほど落ち着き払った男性だった。

最近は『Brilliant(ブリリアント) Wedding(ウエディング)』と名付けられた式場も続々と建設され、結婚式を挙げるならその式場でと憧れる女性が多いらしい。
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