離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「私は久松香織です」
「百々花です」
「そんなの知ってるわ。だからこうしてあなたに会いにきたんですから」
眉根を上下させて言い放つ。初っ端からアクセル全開だ。刺々しさが言葉の端々から感じ取れた。
「ごめんなさい。……それで私にお話というのはなんでしょうか」
「なんでしょうかって、そんなのひとつしかないじゃない」
香織は軽く腕組みをして、ぷいと顔を背けた。
「千景さんと私は、小さいころから結婚が決まっていたの」
千景から聞いている話とは少し違う。親同士が勝手に決めていたもので、最初から結婚の意思はないと千景は伝えていたと。
「それなのに、いざ話を進めようってときになって、いきなり『結婚しました』なんて報告ある? ないでしょう? 本当にひどい話よ」
香織は苦りきった顔で身振り手振りを交えた。