離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

「千景さんはね、昔からずっと私のそばにいてくれたの。いじめられていたら助けにきてくれたし、ずっと一緒だって指輪もくれた。ファーストキスはもちろん千景さんよ? その先だって……ふふふ」


香織が意味ありげに笑う。
幼いころからずっとそばにいた千景は、香織にとってまさに王子様なのだろう。

指輪をもらい、キスをして、さらにその先も……。

ひとつひとつを想像して、百々花の胸がなぜかチリチリと焼けつく。
千景ほどの男に恋愛経験があるのは当然。それをとやかく言うつもりもない。
ただ、過去に関係をもったという女性を目の前にして、やけに心が騒いだ。


「あなたのためにも離婚したほうがいいわ。だって、千景さんの心にあなたはいないんだもの」


香織が高らかに笑い、店内から好奇の目が向けられる。

千景の心に百々花がいないのは紛れもない事実。この結婚は契約に過ぎないのだから。
それが香織から逃げるためだったのか、それともちょっとした意地悪だったのか、本当のところはわからないが。
どちらにしても、離婚がすぐ先にあるのは明らか。そしてそれを考えると、百々花はなんともいえない気持ちになった。
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