離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

そんな顔を見ると、自然と気持ちがあたたかくなる。

ふたりでキッチンに立ってあれこれするのって、こんなに楽しいんだ。

父の利一と真奈加が、毎日楽しそうにキッチンで話している理由がわかった気がする。

でも、好きになってはいけない。高鳴る胸に反して、心にブレーキをかける。
訪れる別れのときに、楽しかったねと笑顔でさよならできなくなるから。一緒に過ごす時間を台無しにしたくない。

香織が今日、百々花を訪ねてきたことも言えなかった。せっかくのひとときに暗い影を落としたくない。


「百々花、今週末の土日のどちらか、時間の都合をつけられないか?」


不意に千景が尋ねる。


「それなら土曜日は休みです。なにかありますか?」
「父親に会わせたい」
「えっ……」


箸を持った手が止まる。
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