離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
百々花はこの先も、千景の父親への挨拶はないのだと思っていた。以前、それについて尋ねたときに千景があまり乗り気でなかったように見えたからだ。
どのみち離婚する予定の妻をわざわざ紹介するつもりはないのだろうと。
「どうかした?」
「あ、いえ、お義父様への紹介はないものだと思っていたので」
「妻を紹介しないわけにはいかないだろう」
千景に言われて、それもそうかと思いなおす。
もともと香織との縁談は、彼の父親が決めていたこと。香織はもちろん父親を納得させなければ、この結婚が無意味なものになる。
少し前までは覚悟していたのに、いざその予定が入ると気持ちが張り詰める。
自分は本物の妻でないとはいえ、相手は香織との結婚を望んでいた彼の父親。ハードルが高いのは間違いない。
今から緊張してどうするの。
そう自分にツッコミを入れ、洋風どんぶりをせっせと口に運んだ。