離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
シュプリームウエディングが入居するビルに百々花が勤めるアリアシェリーの顧客がおり、そこへ品物を搬入した足で訪ねたのだ。
その顧客から、『シュプリームウエディングさんにも顔を売ってきたら?』と言われたのがきっかけだった。
フローリストになってからというもの、いつかはブライダルの装花を手がけたいと思っていたため、新しい仕事につながればという期待があった。
ところが当たって砕けるどころか、かすりもしなかったことになる。
最後に深く一礼し、百々花はシュプリームウエディングの受付に背を向けエレベーターに乗り込んだ。
様々な企業が入居するオフィスビルは、当然ながらスーツ姿のビジネスマンやオフィスカジュアルを素敵に着こなす女性が多い。
このビルへは仕事で何度となく足を運んでいるが、黒いシャツとパンツスタイルにモスグリーンのワークエプロンというユニフォームを着た百々花は、どことなく場違いな感じがして気持ちが急く。
肩甲骨まである黒髪も、仕事中はきっちりとひとつにまとめたしゃれっ気のないスタイル。おまけに特に美人というわけでもない普通の顔立ちなのに、メイクも控えめときている。
急ぎ足で地下駐車場の来客用スペースに止めてある〝フラワーショップ・アリアシェリー〟とペイントされたミニバンに乗り込んだ。