離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

「今どき政略結婚もないでしょう。愛情も抱けない人と生涯を共にするつもりはありませんので」


千景も負けてはいなかった。
彼が急いで結婚しなければならなかったのは、香織の猛アタック以前に弘和という外堀が強大だったからなのだろう。

にらみ合うふたりの間に火花が散って飛ぶ。どちらも引く気はないようだった。

そのときスーッと音を立てて和室の引き戸が開く。それと同時にアニメキャラのような明るい声が弾んだ。


「わぁ、やっぱり千景さんだ!」


香織だったのだ。
引き戸から家政婦が「申し訳ありません」と頭を下げていた。来客中なのに通したことに対する謝罪だろう。


「お庭に車があったから、あれ?と思って来てみたら……って、あなたも一緒だったの」


百々花を見て、声のトーンががらりと変わる。そんな声が出せるのかと思うくらい、最後は低音だった。
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