離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
千景は百々花の手を掴むが、香織が引き留める。
「そんなこと言わずに、少しお話しましょうよ。百々花さん、でしたっけ? いいですよね?」
腰を浮かせかけた百々花は、もう一度座りなおした。尻尾を丸めて逃げるわけにはいかないと、なぜか意地のようなものが芽生えていた。
「えーっと、なにを話そうかなぁ」
香織は顎に指をあてて思案する仕草だ。
「そうだ、千景さん、覚えてる? 初めてくれた指輪のこと」
千景は憮然とした表情を崩さず、質問に返事もしなかった。
「あれは私の宝物なの。今でも大事にしまってるんだ。千景さんも、女の子に初めてプレゼントしたって言ってたよね?」
香織は思い出話を楽しそうに始める。
千景が否定しないのは、それが事実だからだろう。彼の性格からして、違うものは違うと言うだろうから。