離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
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気づけば百々花はふたりのマンションに戻っていた。
千景の実家に香織が来てからは、頭がぼんやりとして春霞の中にいたよう。どうやって切り上げ、ここまで帰ってきたのかもあやふやだ。
千景となにか話した記憶はあるが、内容はぼやけている。
「百々花、少し飲まないか」
バッグを置いてソファに座っていた百々花に、千景がキッチンから声をかける。
そちらを見れば、千景はワインセラーからボトルワインを一本取り出した。
どことなく気持ちが沈んだときは、アルコールで誤魔化すのも手かもしれない。まだ日の光は健在。夜には少し早いが、このままでは眠れそうにない。
「はい。いただきます」
笑みを浮かべたつもりが、なんとなく頬が引き攣れた。
千景が用意してくれたのは、メタリックピンクのボトルが美しいロゼワイン。グラスに注ぐと、クリアな桜色をしていた。