離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
隣に座った彼とグラスを傾ける。イチゴやチェリーのようなとろりとした甘みに控えめな酸味。野花のブーケのような甘やかな香りが鼻から抜けていく。とても飲みやすい。
「百々花、今日は本当に悪かった」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
手も首も振って答える。
大事なクライアント先の令嬢が相手なのだ。千景の父親が納得しないのは当然だろう。
「香織が百々花に会いにきたこと、なんで話してくれなかったんだ」
彼女を呼び捨てにしたところに耳が反応する。年下のうえ幼馴染だと言っていたから、べつにおかしくはない。それなのに心はもやっとする。
千景は前かがみになって膝の上に両肘を置き、百々花の顔を下から覗き込むようにした。
「余計な心配をかけたくなかったので。でも本当に平気ですから」
努めて明るい口調でニコニコする。
「余計じゃない。これからは、なにかあったらなんでも話してほしい」
「はい、今度からはそうします」