離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

「そう簡単にはいかないよね」


苦笑いでひとり言を呟き、車を発進させる。
明るい光に導かれるように地上に出ると、風で流れる雲の隙間から傾きかけた太陽が顔を覗かせた。

六月中旬。夏まであともう少しだ。
昨夜から今朝にかけて雨と強風をもたらせた低気圧は昼過ぎに通り過ぎ、雲の隙間から青空を覗かせている。


「明日は晴れるかな」


暑くなりそうな明日を想像しながら、百々花は車を走らせた。


百々花が働くアリアシェリーは、花や観葉植物のレンタルや販売、アレンジメント生花の販売をしている会社である。
植物のもつ力を最大限に生かし、みずみずしさと安らぎの空間を演出するのが、フローリストである百々花の仕事だ。

庭で花を育てるのが好きだった母は、百々花が七歳のときに他界した。
父から母の話を聞くときに決まって出るのが花好きという一面だったため、その影響もあり花は百々花にとって子供の頃から近い存在。春から秋にかけて花が咲き誇る自宅の庭は百々花の遊び場でもあり、植物と触れ合う場所でもあった。
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