離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

酔ったせいだと思ってもらえる。この場限りの情事だと流してもらえるだろう。

千景はなにも言わずにベッドに上がり、自分のワイシャツのボタンを外していった。目の前に晒された逞しい上半身を見て、これ以上ないほど異様に胸が高鳴る。

身じろぎもできずに千景を見ていると、彼はゆっくりと百々花に覆いかぶさった。片肘を突き、もう片方の手で百々花の髪をすく。
百々花が抱いてと言ったときに千景から漂った困惑は、その目から消えていた。しっとりと艶めいた瞳が百々花を見つめる。

そのふたつの瞳を交互に見ているうちに唇が重なった。

感触をたしかめるかのように千景が表面をなぞる。何度となく百々花の唇を食みながら、両手の指先を絡めた。
交差する指にまで熱を感じ、感情がどんどん高ぶっていく。

もっと熱して、もっと酔いしれたい。

ふとそこで百々花は、人恋しいのではなく、千景を恋しかったのだと気づいた。
香織を見て胸が苦しかったのは、彼女に嫉妬していたのだと。

キスも、その先も千景とだったと言ったときの香織の口調が蘇る。それを振り払うように顔を横に振ると、「火をつけておいて今さら逃げるな」と千景の唇が追いかけてきた。
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