離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
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いつの間に眠っていたのだろう。
午前四時半。外が白み始めているのか、カーテンがぼんやりと明るい。
目を覚ました百々花は、千景の腕に抱かれているのを目の当たりにして少なからず動揺した。昨夜のことは、夢の一幕のような感覚もあったから。
言葉にこそしていないけれど、想いをぶつけるようにして抱かれたのを、千景はどう思っただろう。
抱いてと迫ったのは、酔っぱらいの戯言だと思ってくれればいいのだけれど……。
千景は千景で、夫婦らしくするための一連の作業的に捉えているだろうから。
千景恋しさに抱かれた後に残ったのは、抱かれる以前よりも増した寂しさだった。
下腹部に感じる鈍い痛みを抱え、音を立てないようにベッドを抜け出し、熱いシャワーを頭から浴びる。胸もとに千景が付けたと思われる赤い痕を見つけ、息が苦しくなった。
朝食を作り、身支度を整えて早々にマンションを出る。日曜日の今日、百々花は仕事だった。
出勤時間にはまだ早すぎるが、それまでゆっくり心を鎮めるのもいいかもしれない。電車を使わず、歩けるところまで行くのもいいだろう。
店に着くまでにはきっと……。
見え隠れする不安と熱い想いに、手でそっと蓋をした。