離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
アルコールのせいで人肌が恋しくなったのだろう。それは十分にわかっていた。
でも千景は、そこでノーと言えるほどの優しさを持ち合わせていなければ、理性も強固ではない。ましてや相手は、抱きたくても抱けなかった百々花だ。
酔ったせいだと言い訳をされてもいい。ひとときだけでも目の前の百々花を自分のものにしたかった。
もしかしたら、百々花も同じ気持ちを抱いてくれているのではないか。
肌や瞳に感じる熱からそう錯覚したが、目覚めた彼女がとった行動は、一夜の過ちに過ぎないという証明だった。
千景が百々花と一緒にいるためには、契約という名ばかりの結婚が必要なのだ。
こんなにも臆病だったとはな……。
我ながら情けなくて笑える。自嘲気味に鼻を鳴らした。
百々花を失うくらいなら、気持ちを押し殺すくらいなんのことはない。
千景は気だるい身体を起こし、昨夜の余韻が残るベッドを抜け出した。