離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
将来は草木に関わる仕事を。
そう胸に抱いていた夢を実現させ、大学を卒業後、アリアシェリーでフローリストとしての経験を積んでいる段階である。
オフィス街から二十分ほど走り、百々花は車を止めた。
住みたい街ランキングでも毎年上位にランクインし、おしゃれな街としても人気のある場所。そこにグレーの外観がシックなアリアシェリーはある。
二階建ての店は間口が広いうえ大きな窓もあり、中に入らずとも店内の花がよく見える。夕方から閉店の七時にかけては外からスポットライトをあてるため、特に冬場は幻想的な光景になる。
店の脇にある駐車場でエンジンを切り、いざ車を降りようとした百々花は、そこで衝撃的な事実に直面した。
履いていたスニーカーがないのだ。
素足で運転する癖のある百々花は車に乗り込むときに靴を脱ぐのだが、それをさっきのビルの駐車場に置き忘れてきたらしい。
「やだ、どうしよう……」
なんて間抜けなのだろうか。
あとからあの場所に駐車する人は、揃えて置き去りにされた靴を見てクスッと笑うか呆れるかのどちらかだろう。
百々花はキーを回して、エンジンをかけ直した。