離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

「ち、違いますよ。飲みに誘ってなんて。えぇっとですね、今、神谷さんと入口からのアプローチはどうかと相談していたんですよ」
「それじゃ、俺の耳がおかしいらしいな」


眉を交互に上げる千景の仕草に、田原は目を白黒させる。


「あ、いえっ、その……。あ、そうだ。あっちに呼ばれていたのを思い出しました」


しどろもどろになった田原は手のひらをパチンと叩き、わざとらしく百々花たちから離れていった。

千景の表情が、ほんの少しだけやわらかくなる。それでもマンションで見るよりは、ずっと鋭い。


「どう? あとは明日の搬入を待つばかり?」
「そうですね。搬入してからが勝負です」


デザイン案は千景に何度もチェックしてもらい、細かな点も改良してある。あとは実際に置いてみてからになるだろう。

入口から会場までのアプローチを目で追い、装飾されたところを想像する。

きっと素敵なものになる。

根拠はないかもしれない。でも、そんな自信が湧き上がるのを感じた。
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