離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「神谷さん、ちょっとこっちにきてもらえる?」
千景がいきなり百々花の腕を掴み、会場のほうへ足を進める。
「どうしたんですか?」
「すぐに終わるから」
言われるままに腕を引っ張られた百々花は、千景に披露宴会場の隣にある部屋に通された。
普段は控え室として使っているのだろう。大きな鏡やメイクアップするための広いドレッサーがある。式場の外観同様に白を基調にした、ドレッシーな部屋だ。
千景はそのドアを後ろ手に閉め、百々花を突然引き寄せたかと思えば、唇を塞いだ。
一瞬、なにが起きたのかわからなかった。いきなりのキスに身体が強張る。
唇は毎晩重ねている。でも、おやすみのキス以外で触れるのは、あの夜を除いてない。
千景は離れないように百々花の腰を引き寄せ、もう片方の手で優しく頬に触れていた。いつものように穏やかなキスとは違い、どこか性急さを感じさせる。それでも決して舌を絡めようとはしない。表面を啄み、なぞり、軽く吸うだけ。
でも今は仕事中。普段の千景だったら、絶対にしないような行為だ。
唇を重ねるうれしさよりも、戸惑いのほうが大きかった。