離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
替えの靴がないため車から降りられないし、その後の仕事もできない。取りに戻るしかないだろう。
自嘲気味にため息をつき、ブレーキペダルから足を離す。するとそこで、百々花の車の進行を妨げるかのように白い高級車が止まった。
そこに止められると出られないんだけどな、と思いながらブレーキを深く踏み込む。
クラクションはできれば鳴らしたくないが、降りて車を動かしてもらうようにお願いするにも靴がない。
どうしようかと悩んでいるうちに、白い車から人が降り立った。
「えっ……?」
その顔を見た百々花はまず自分の目を疑い、それから夢でも見ているのではないかと白昼夢を疑う。
しかし、何度も激しくまばたきをしてみても、ここに現れる所以のまったくない人物に変わりはなかった。
流川千景。シュプリームウエディングの社長だったのだ。
サイドをきっちりと撫でつけた黒髪。獲物を狙うかのような鋭い双眸。シャープな顔立ちは、テレビで見たよりずっと男前だ。
そしてなによりも、その威圧感に圧倒される。内からにじみ出るオーラとでもいうのか。