離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
千景に迷惑をかけられない。仕事に穴を開けたくない一心で無我夢中でここまで来たものの、本当は心細くて仕方がなかった。
ひまわりを手に入れられなかったらどうしよう。間に合わなかったら大変だと、不安でたまらなかったのだ。
そんな不安定な精神状態のときに千景が差し伸べてきた手は、百々花の心を激しくかき乱した。
『あと二十分くらいで着くから、金谷港で待っていてくれ』
「ありがとうございます!」
千景との通話を切って、急いで車をUターンさせる。ナビをセットしてアクセルを踏み込んだ。
五分後、金谷港に到着した百々花は、車いっぱいに積んであるひまわりをひと箱ずつ桟橋へ運び始めた。千景が着いたら、すぐに出発したい。
太陽は傾きかけ、時間は刻一刻と過ぎていく。
早く、早く。
そんな想いだけが百々花を動かしていた。
ひまわりの入ったダンボールをすべて運び終え、息を弾ませて東京湾の遥か先を見つめる。
もしかしたら、あれかな……。
左前方からこちらに向かってくるクルーザーの姿がどんどん大きくなっていく。青い空と海に真っ白な船体のコントラストが美しく、目を凝らすと千景が大きく手を振るのが見えた。