離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
もったいないくらいの褒め言葉を口にした田原の隣で、千景が短い返事をする。
どこか不満だったのか。期待外れだったのか。
恐々と百々花がその横顔を見上げると、千景は腕組みをして何度か深くうなずいていた。
「……ダメ、でしょうか」
息をのんで反応を待つ。
「その逆。期待を大きく上回る出来だ」
「ありがとうございます!」
百々花はうれしさのあまり、めいっぱい腰を折り曲げた。
来場されるお客に喜んでもらうのは大前提。でも、千景にその言葉をかけてもらいたい一心でやったのも事実。百々花が底力を出せたのは、彼の存在があってこそなのだ。
準備中ずっと唇を引き結んでいた千景の表情がふっとやわらかくなる。百々花もそこでやっと息をつけた気がした。
「さてと、神谷さん、送っていきますよ」
「えっ」
とっさに千景を見る。