離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
立っているだけでも無言の圧力を感じさせる男が、長い足でずんずんと自分に向かって歩いてくる。
百々花は運転席で身じろぎもできずに固まった。
千景は躊躇うことなく百々花のいる運転席側のドアの横で立ち止まる。
な、なんだろう……。
自分になにが起こっているのか理解できないというよりはむしろ、なにも考えられないといった方が正しいかもしれない。百々花はただ身を固くして、運転席に座ったまま窓の外に立つ千景を見上げた。
わけもなく加速していく鼓動。
百々花がごくりと喉を鳴らしたタイミングで、千景は目の前にすっとあるものを持ち上げた。
「……あっ!」
それを見て、思わず声をあげる。
百々花のスニーカーだった。ついさっきビルの駐車場で脱いだまま置き忘れてきたスニーカーだ。
慌ててドアを開けるものの、裸足では降りられない。
百々花があたふたとしていると、千景がアスファルトにそれをそっと置いた。
「すみません!」