離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
なにがどうしてこんなことになっているのか。
千景が百々花のスニーカーを持って現れるなど、想像の範疇を優に超えている。
スニーカーを急いで履き、そこでようやく車から降り立つ。それと同時に腰を深く折り、頭を下げた。
「キミはシンデレラ?」
かすかに笑いを含んだ、耳に心地のいいベルベットボイスが後頭部に降ってくる。
ハッとして頭を上げると、最初に覚えた威圧感とは程遠い爽やかな笑顔がそこにあった。
不意打ちに見せられた予想外の笑みが、百々花の心拍を弾ませる。
「あの、どうして……?」
なぜ千景のもとに百々花のスニーカーがあったのか、さっぱりだ。
「駐車場で車から降り立ったらこれがあってね。キミがちょうど車を走らせたところだったから呼び止めたんだが、そのまま気づかずに」
なんと、あの場で千景が気づいて呼び止めたという。
周りをまったく気にもせず走りだした自分の行動を思い返して、なんだかやけに恥ずかしい。