離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
とろけるチーズを間に挟んで形を整えている隙を突き、昌也は指を伸ばして卵をつまんだかと思えば、そのまま口もとに持っていった。
「あっ、ダメじゃない!」
「とろとろでうまそうだったから。百々花もやる?」
もう一度指を伸ばした昌也の手を押さえたところで、千景が起きてきた。
「おはよう」
意図せず手を繋いだようにしている百々花と昌也を見て、その表情が曇ったように見えた。
慌てて手を放して昌也からも離れる。やましいことはないものの、昨夜の告白は千景も聞いているから、変に勘繰られたら困る。
「お、おはようございます。あれ? 今日は仕事ですか?」
千景は、日曜日なのにワイシャツにネクタイ姿だった。
「フェアの会場に行ってくる」
「そうなんですね」
フェアは土日の二日間の予定である。
千景はそう言いながら、コーヒーメーカーから抽出されたコーヒーを自分でカップに注いだ。焦っていたため、百々花が手を出す隙もない。
出かけるのであれば、急いで朝食の準備をしなくてはならない。百々花は急ピッチでオムレツを焼き上げた。