離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
重なる想い
平屋の大きな日本家屋を前にして、百々花は深呼吸を繰り返す。緊張感が半端ない。
「ここ、どこ」
昌也は建物と百々花を交互に見た。
「千景さんの実家よ」
「あの人の? なんで? なにしに来たんだ?」
「見たまんまよ」
百々花は昌也が肩に掛けているバッグを指差した。
気持ちを落ち着け門扉のインターフォンを押すと、この前来たとき同様、家政婦らしき女性が応答する。
「千景さんの妻の百々花です」
『……少々お待ちくださいませ』
一瞬躊躇う空気が漂ったが、取り次いでもらえそうだ。
ふぅと長く息を吐き、緊張を和らげる。そうこうしているうちに玉砂利を踏みしめる音が聞こえ、圧迫するようなオーラが満ち満ちてくる。知り合った当初の千景にも共通する感覚だ。
空気を読まなそうな昌也でも、半歩ほど下がった。